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- グラフィック・デザイン・Web
- 2017.06.10
- SAMURAI代表 佐藤可士和さん講演会
様々な企業や商品のブランディングを手がける、
クリエイティブディレクターの佐藤可士和さんの講演会が行われました。
佐藤さんの事務所「SAMURAI」では、今年もバンタンの卒業生・在校生を、社員・インターンとして採用しています。
講演会のはじめに、この春の卒業生が入社後はじめて手がけた、
谷川俊太郎さんと佐藤さんがコラボレーションした絵本デザインを紹介していただきました。
自分たちと同じような勉強をした人の携わった仕事を実際に見て、学生の皆さんは刺激になった様子です。
今回の講演では、「デザインの仕事はどれくらい幅が広いものなのか、どういうことが出来るのか」を、
佐藤さんの手がけているプロジェクトを例にしながらお話しいただきました。
佐藤さんはこれまでに、ユニクロ、セブンイレブン、楽天など・・・
挙げればきりがないほどの企業とのプロジェクトを手がけ、
ひとつひとつのものをデザインすることにとどまらず、ブランドの全体戦略、
プロジェクトの方向性やゴールイメージまでをデザインされています。
こういった大企業からのオファーはもちろん、解決したい問題を抱える地場産業や
教育、医療関係などからもオファーは来るそうです。
例えば、
「団地の未来プロジェクト」という、団地再生のプロジェクト。
高度経済成長期に日本全国で多く立てられた団地ですが、
世代交代や生活様式の変化などで、放っておくと住む人が減少し続けていく問題があります。
それに対して、建物の見かけのみ整えるのではなく、
若い建築家のコンペを行って集会場をいかに活用できる場にするかなど、
人が集まって住む団地だからこそ可能な「新しい団地の住まい方」を考え、
さまざまな分野の専門家が集まって、オープンイノベーション的にプロジェクトを進行して、
ひとつひとつの課題を解決していくといった問題解決の新しい方法までをデザインされています。
他にも「ふじようちえん」という立川にある幼稚園から、園舎建て替えの相談を受けた際には、
「園児にとって、幼稚園で遊ぶのが楽しみなのに、園児が過ごす園舎は遊具を除いてしまうと
小学校や中学校とあまり変わらない建物。
もっと楽しい園舎はないものかと考えて、
園舎自体を楽しい巨大な遊具にするというアイデアを考えたんです。」と佐藤さん。
建築家に依頼して、屋根の上で走り回れるドーナツ型の園舎を設計し、
制服の代わりになるオリジナルTシャツをデザインするなど環境を整えたところ、
OECD(経済協力開発機構)から世界で最も優れた学校施設に選ばれました。
こういったインパクトのあるものができると、
少子化にもかかわらず、「ふじようちえん」に入りたいと引っ越してくる家族も多く、
ふじようちえんで働きたいという先生も増え、新しい動きがたくさん生まれたそうです。
デザインの力でインパクトをおこせると、そのプロジェクトは上手く走っていくといいます。
「広告への費用がかけられなくても、本質を突いたコンテンツが出来れば、新聞社などが情報を取りにきてくれます。
大企業と違って、地方の企業や団体などはマスメディアに広告を出すような予算はありません。
プロジェクトによって最善のアプローチを考えることが大切。」と、デザインのお仕事の捉え方をお話いただきました。
続いて、2016年度の佐藤さんの「文化交流使」としての活動のお話しへ。
文化交流使とは、文化庁から指名され、
世界の人々の日本文化への理解の深化につながる活動や、ネットワークの形成・強化に繋がる活動を展開し、
日本の文化を世界にアピールしていく活動を担う文化人、クリエイターのことです。
佐藤さんは、クリエイティブディレクターとしてはじめて文化交流使に指名されました。
これはクリエイティブが日本の文化として文化庁のような機関からも認められたことを意味しています。
「これからデザインの仕事をすることになる皆さんも、
デザインが文化として位置づけられた流れの中で仕事していくことになる。
これまでのデザインの仕事との大きな変化だと思います。」と、
社会におけるデザインの仕事の注目度の高さを強調されていました。
文化交流使としてNY、ロンドン、パリでのデザイン講演会、展覧会を行った際には、
世界中の人が日本のデザインに注目していて、とても興味をもってくれていることを実感されたそうです。
「普段手がけていることが、世界で認められるということを実感した。
皆さんこれから世界を相手に仕事をしてほしい。」とメッセージをいただきました。
最近の、日本の伝統文化に特化したプロジェクトとして、
歌舞伎の八代目中村芝翫襲名披露のクリエイティブワークや、
有田焼創業400周年プロジェクトでの作品制作などを紹介いただきました。
「伝統的な手法や、それらが元々持っている良さを再度見直し、デザインの力を使って付加価値をつけ、
新しいプレゼンテーションでグローバルに発信していく仕事は、今の日本にとってとても大切なこと。
必要な情報を整備し、わかりやすくヴィジュアライズするという、
伝統文化の世界ではこれまでになされてこなかった方法で、自然と話題を呼び多くの人に興味をもってもらえた。」
と佐藤さん。
「皆さんがこれからやるデザインの仕事は、社会からとても期待されている仕事です。
元々日本が持っているいいものに高付加価値をしたり、情報過多の社会の中で必要な情報をクリアに伝えること、
そうして問題を解決していくのがデザインの仕事という意識を持ってやってほしい。」
と、未来のデザイナーの皆さんへの期待をお話しいただきました。
佐藤さんが実感しているデザインの持つ力の可能性とその仕事の幅広さや、
一線で活躍するクリエイティブディレクターがどんな思考プロセスでデザインを生み出すのかが聞ける、
大変貴重な講演会となりました。
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